電力価格が200円/kWhを超えました【データの見方】

こんにちは。今回は、最近ニュースにもなっている電力取引所(JEPX)の動きについてご紹介します。「これから上手に発電設備を稼働させて収益を上げるぞ」と思っていらっしゃる方、「データ分析は苦手…」と思っていらっしゃる方に是非読んでいただきたい内容です。電力システムの今について、私なりに整理してわかりやすく情報をご提供するとともに、データ分析をより身近に感じていただけるように解説しています。

1.電力取引市場とは

分かりやすく言えば、電気を発電して売りたい人と電気を買って使いたい人が売り買いをする場のことです。正式には日本卸電力取引所(JEPX)と呼ばれる一般社団法人によって運営されています。従来日本の電力システムは、一般電気事業者と呼ばれる企業がエリアごとに発電・送配電・小売りをすべて担っていましたが、電力自由化によって法令が変更になり、発電、送配電、小売りの3つの事業は別の事業会社として運営することとなりました。

この中で、電力取引所の役割は、公正で競争原理が働く電力市場をつくるためにスポット市場などの運営に取り組んでおられます。分かりやすく言えば、「明日の11時30分に10円/kWh以下ならば10MWhの分量を購入したい」という人と「明日の11時30分に8円/kWh以上であれば8MWhの分量を売りたい」という人などたくさんの人に集まってもらって適切な価格と取引量を仲介している方々です。また、そのために必要な情報を適切に公開されています。今回の記事ではここで公開されているデータを用いてグラフなどにまとめ、解説してまいります。

特に2016年の4月から自由化の範囲が広がり、以下の図のように少しづつ取引所を通じて売買される電力の量が増えていっています。売買される電力の量を「約定量」などと表現されます。けっこう増えていますよね。現在は日本全体の電力需要の2020年9月時点で36.9%に達しているそうです。(経産省の資料より)

まだ取引に参画されていない企業さんも今後こうした市場で売買をすることも出てくるかもしれませんね。

総約定量の推移
2.ニュースになっていること

ニュースを読まれた方もいらっしゃるかもしれませんが、12月末から今もですが、この取引所での価格がすごく高くなっているのです。2016年の4月から2021年の1月までのスポット価格の推移を見ると以下の通りです。

スポット価格の推移

すごいですよね。250円/kWhになってしまっているところもあるようです。発電を仕事でやっている方なら「こんな価格で電気売りたいなぁ」と思うかもしれませんね。予備やスタンバイ中の電源があるならビジネスチャンスかもしれません。

実際、市場で売りたい人と買いたい人の申し出ている量の推移を見ると以下の通りです。従来は買いたい人より売りたい人の方が多かったのですが、今は買いたい人の方が売りたい人よりも多いようです。

売り買いの入札量推移

一方、電気を売っている人達は大変です。インバランス料金という制度があって需要側の実態と計画にずれがあるとその分はインバランス料金として請求されてしまうわけです。しかもその価格はその時の市場価格に連動しているので200円/kWh以上で支払をしなければならず大変なことになっていらっしゃいます。小売事業者50社連名で大臣へ意見書を出しています。

急遽経済産業省はこの事態を受けて「インバランス料金は200円を超えないこと」という新しいルールを打ち出しました。この辺りの仕組みは少しややこしいのですが、需要があれば別途ご説明いたします。以上がニュースになっていることの概要と解説でした。

3.珍しさを表現しよう

こんな価格になることは珍しいですよね。では、どれくらい珍しいかを数値を使って説明することはできますか?「いい値段になったらビジネスチャンスだ。設備を稼働させよう」といったようなあいまいな基準では仕事のスピードが遅くなりますよね。そういう時にだれにも明確に伝わる基準をつくっていきましょう。

ヒストグラム(度数分布)というものはご存知でしょうか。どんな事象がどれくらいの頻度で発生しているのかということを理解するために便利な手法になります。

先ほどは時間軸にあわせたスポット価格の推移を表示していましたが、今回は価格帯ごとに何回発生したか数を数えて集計しています。以下の度数分布をみてください。横軸が価格帯です。[0, 1]と書いているのは「0~1円/kWhの価格帯」であり、[1,2]と書いているのは「1~2円/kWhの価格帯」の意味です。この価格帯に対してそれぞれ何回そのような価格が発生したかを表したのが縦軸になります。6~7円の価格帯では、14000を超える回数発生していると読み取れますね。こちらは、2016年4月1日~2020年12月25日までのスポット価格データをもとに作成しています。

2020年12月25日までのデータ

いかがでしょうか。こちらのヒストグラム(度数分布)を見るとほとんどの場合、3円~16円に収まってますよね。一番右端を見ると「<50」と記載がありますが、これは50円/kWh以上の価格帯になったデータが何個あるかを表しています。図を見ても読み取れないほど数字が少ないのですが、実は、50円/kWh以上は、22回発生していました。データは全部で83040個ありますので、22÷83040≒0.03%です。2020年12月25日より前のデータでは、わずかこれだけの割合で50円/kWh以上となりました。珍しさを数字で表現するならば、「いつもなら0.03%程度しか発生しないような珍しいこと」と言えそうです。

さて、2021年1月22日まで対象データを広げてヒストグラムを作成するとどうなるでしょうか。下の図を見てください。「<50」のデータがニョキっと出ていますね。これを調べてみると、745回発生していました。今回は前回と比べて対象データが増え、84384個となっています。前回の83040個との差は、1344個です。一方、50円/kWh以上となったデータは745と前回の22個の差で733個です。それでは今回の割合はどうでしょうか。733÷1344≒53.8%でした。

2021年1月22日までのデータ

普段なら0.03%の確率で発生しているようなことが、2020年12月26日~2021年1月22日の間では、なんと53.8%の確率で発生しているわけです。このようにしてボイラーチューブの管厚さ計測値であっても、三次過熱器メタル温度であっても同じように評価していくことが出来そうですね。また、気づかれた方かもしらっしゃるかもしれませんが、これらの度数分布表は、正規分布と呼ばれる分布などに近い形をしていますよね?データをたくさん集めると結局このような形になるから不思議です。正規分布に当てはめると、より取扱がしやすくなったりします。

異常検知技術についても基本的な考え方としては上記のような「いつもと違うな」ということを検出するものになります。しっかりと基本的なところから抑えていれば、良く分からないけどなんかすごそう(?)みたいなものに騙されずに済むかもしれませんね。

今回は以上でおしまいです。次の記事では、「どうしてこんな電力価格になっているのか」といった内容について、気象やプラント停止状態などの公開情報をもとに発電事業をされている方のヒントになるような記事にしたいとおもっています。ぜひお楽しみに!最後まで読んでいただき、ありがとうございました!ご意見・コメントお待ちしております。

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