電力価格が200円/kWhを超えました【データの見方】後編

前回の記事では電力価格が高くなっていることを示しながら、データの見方など基本的なポイントもご紹介いたしました。今回はその後編ということで、もう少しその理由について少し考えていきましょう。

流れているニュースによると「寒波のせいで電力需要が高まった」「太陽光の発電量が下がった」「燃料の在庫不足している」などさまざまな意見が出ています。こうした「意見」はとても大切なのですが、さらに、その意見に関するデータを見ると実際どうだったかを確認することができます。

設備保全や操業の問題についてお話を伺うと、「意見」は出ているのですが、それをデータなどを使って数字で把握し「事実」に関する情報を整理できていないケースが目立ちます。それによって原因を把握できず、問題解決が出来ずにいる状態もあります。難しいデータ分析のスキルは必要ないので、まずはデータを見る習慣をつけたいですよね。

さて、今回の電力価格が高くなっている件ですが、ニュースに出ているさまざまな意見に対して、事実(データ)を整理してみました。

お笑い芸人のミルクボーイの漫才で、ツッコミの人が「それは〇〇や」、ボケの人が「でも△△やねん」、ツッコミの人が「ほな〇〇やないか」、(続く)の掛け合いはごぞんじでしょうか。面白いので是非一度見てください。漫才の中で「Aだ」→「新しい事実」→「Aじゃない」→「新しい事実」→「Aだ」というように、ボケの人が繰り出す事実情報をもとに、ツッコミの人が意見を変えていますね。データ分析も分かりやすく言えばこれと同じようなものです。ニュースに出ているさまざまな意見に対して事実を確認していきましょう。

意見1:寒波で電力需要が高い

電力価格が200円/kWhを超えたんだって?そりゃ年末から一気に寒くなったせいだ。暖房やこたつをいっぱい使っているに違いない。電力の需要が年末から急に旺盛になって、電気を買いたい人の数に対して、売りたい人の数が少なくなってしまって値段が上がっているんだよ、きっと。

この意見に対して、実際のデータを見てみましょう。

東京の平均気温

このデータは気象庁のホームページから東京の1日の平均気温データを2016年の1月から2021年の1月20日まで持ってきました。いかがでしょうか。毎年1月20日ごろが最も寒いと言われる時期のようですが、今年の冬はこれまでと比べて特別に寒いというわけではなさそうですね。

意見2:天気が悪くて太陽光発電の量が少ない

いやいやこれだけ電力価格が高くなったのはこのところの悪天候が続いていて太陽光発電の発電量が少なくなっているからではないか。曇りの日が多くて発電量が少なくなってしまって、電気を買いたい人に対して供給できる電気の量が不足しているから価格が高くなってしまっているんだよ、きっと。

それではこの意見に対してもデータを見てみましょう。

東京の日照時間

このデータは東京の1日の日照時間の変化を表したものです。同じく気象庁のページからダウンロードして可視化しています。いかがでしょうか。年末から1月20日にかけて特に日照時間が異常に減っているようには見えませんね。

意見3:燃料が不足している

電力価格が高くなっているのは、火力発電で発電するための燃料が少なくなってしまっているからで、発電所が十分に稼働できないため、電気を欲しい人に対して供給できる数が少なくなってしまっているんじゃないか、きっとそうだ。

これについてもデータを見てみましょう。燃料の在庫情報については、企業秘密になっていますので、気象庁のホームページのように公開されていません。なので、今回は燃料の取引価格に注目してみました。燃料が少ないということはみんなで燃料を買いに行って、燃料の価格も高くなっているはずです。日本のLNG価格というのは、Japan Korea Marker(JKMと略される)と呼ばれる指標が重要になります。この指標はPlattsという企業さんが実際の市況にもとづいて定めされているもので、日本、韓国、中国、台湾といった東アジア地域の状況を反映しています。LNGを売買する人はこの指標を参考にして売買されていますので、わかりやすく”日本のLNG価格の推移”と思ってもらっても良いかもしれません。

Japan Korea Marker

こちらは、Japan Korea Markerに関連する取引の価格推移を表したものです。ちょうど12月の中旬から燃料の価格がドーンと上がっていますね。最新のデータでもまだ少し高めのようです。東アジア地域でLNGの取引したい需要が高まっていて、需要に対して、供給が追い付いていないと言えそうです。

また、以下の円グラフは停止中のユニットの割合をプラント種別に表わしたものです。全期間で見てみると以下の通りです。公開されている発電情報公開システムのデータをもとに作成しています。

停止割合(認可出力ベース)※全期間
停止割合(認可出力ベース)※2020年12月~2021年1月

いかがですか。データを全期間で整理したものと、2020年12月から2021年1月の2か月分だけをまとめたものを比較してみましょう。火力(ガス)、火力(石炭)、火力(石油)どれを見てもこの2か月間は停止割合が大きくなっていますね。停止理由はデータを見ても詳しくは分からないのですが、Japan Korea Markerの数値の動きから判断すると、燃料不足という事実は正しいのかもしれません。

余談ですが、LNGは従来日本や韓国で輸入される量が東アジアでは最も多かったわけです。しかし、近年では中国がLNGの輸入を増やし、中国が輸入量でトップになるというニュースやコメントも出ています。これが影響し、日本でLNGの調達が難しくなっているのかもしれませんね。そうだとしたら、中国の旧正月ごろ(2021年2月12日)に需要が落ち着くのでしょうか。

以上で今回の記事はおしまいです。いかがでしたか、みなさまもいろんな意見をお持ちだと思いますので是非データで確認されてみてくださいね。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。今後もデータ分析に役立つ知識などを配信してまいりますのでよろしくお願いいたします。

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