初めてガスタービンの設備担当になったら読むガスタービンの基本の「キ」② ~ガスタービンエンジニアのための熱サイクルのおはなし~ 

 本シリーズでは、初めてガスタービンの設備担当になった方に向けて、ガスタービンの基本的な知識をご説明しております。第2回目の今回はガスタービンの“熱サイクル”のおはなしです。熱サイクルについては数多くの教科書で説明され、最近は分かり易いブログもたくさん出回っています。そんな中、本稿はガスタービンエンジニアの方向けにかかせていただいております。

「熱サイクル、そんなの知らない。」と思われる方、「学生時代にやった覚えはあるけど、忘れた。実業務に役立つの?」と思われる方、いらっしゃると思います。正直、そんなこと知らなくてもガスタービンの運転業務やメンテンス業務はできるかもしれませんが、熱サイクルを知ることで、ガスタービンってどうやって動力を生み出しているの?どうすることが(どういう状態にすることが)そのガスタービンにとって良い状態なの?どうすれば効率的な運転ができる?というようなことが、イメージしやすくなったり、直感的に分かるようになったりするのではないかと思い、こちらをテーマに書かせていただきます。

1.熱サイクルと熱機関

“熱サイクル”とは、ある任意の作動流体(物体、物質、作動物質・・)が、色々な状態変化を繰り返したあと、再び一番初めの状態まで戻るときの一連の変化のことを指します。

また“熱機関”とは、高温の熱源から熱量をもらって、熱サイクルを使って外へ向かって仕事をして(動力を得て)、残った熱量を低温の熱源に排出する機械のことで、簡単に言うと熱を仕事(動力)へ変換して取り出す機械のことです。ガスタービンも“熱機関”の一つです。

熱機関

2.ガスタービンの熱サイクル

ガスタービンの損失がない理想的なサイクルは“ブレイトンサイクル”とよばれます。ちなみにガスタービンの熱機関を作った米国人エンジニア“ジョージ・ブレイトン氏”に由来するそうです。

熱サイクルは、横軸に体積V、縦軸に圧力Pを取ったP-V線図、また、横軸にエントロピS、縦軸に温度Tを取ったT-S線図で上述した様々な状態変化を表します。圧力×体積で、また、温度×エントロピで、各々仕事(エネルギ)を表すことができるため、これらの図を描くと熱機関の働きが分かり易く表現できるからです。

理想的なブレイトンサイクルは、以下4つの工程です。実際のガスタービンの動作を合わせて記載します。ここで“断熱”とは、熱の出入りがないつまり損失がない状態変化、ということです。勿論、実機ではありえませんが、現象を単純化するため、まずは理想的な熱サイクルをみていきたいと思います。

【4つの工程】

  • 1→2 断熱圧縮 → 圧縮機で空気の圧縮
  • 2→3 等圧加熱 → 燃焼器で燃料を燃焼させ熱量Q1を投入
  • 3→4 断熱膨張 → タービン部で燃焼ガスの膨張
  • 4→1 等圧放熱 → 大気放出(熱量Q2を放出)

【グラフ】

ブレイトンサイクルのグラフ

上述の通り、圧力×体積、温度×エントロピで各々仕事を表し、2つのグラフ上の線で囲まれた部分が、熱機関つまりガスタービンから得られる仕事量になります。PV線図を使って簡単に1サイクルでの仕事、エネルギの動きを見ていきますと、左図のピンク領域の面積がタービンで行う仕事で、右図の青色領域の面積が圧縮機を回すのに必要な軸動力となり、差し引いた緑色領域の面積が、このガスタービンから得られる仕事量”W”ということになります。

3.熱効率について

熱サイクルの熱効率”η”は、サイクル1周で投入した熱量のうち、どれだけ有効な仕事に変換できたか、ということになるので、次の式で表せます。

                W:1サイクルで取り出せる仕事量  Q1:等圧加熱過程で投入される熱量

これに、熱力学第一法則、理想気体の状態方程式、可逆断熱変化式(ポアソンの式)を使って変形すると次のように表すこともできます。この式は、ブレイトンサイクルの熱効率式としてよく知られた式です。

              κ:比熱比Cp(定圧比熱)/Cv(定容比熱)   P1:圧縮機入口圧力   P2:圧縮機出口圧力

(2)式は、比熱比一定と考えると、P1は大気圧力で変わらないので、圧縮機での圧縮後の圧力P2が大きいほど熱効率はあがることになります。また、さらに式変形をすると、下式の通り、今度はタービン入口温度T3が上がれば上がるほど熱効率も上がることが分かります。

                T3:タービン入口温度(絶対温度)   T4:タービン出口温度(絶対温度)

ここで、理想的なサイクルではなく、実機の熱サイクルを考えてみたいと思います。圧縮機内部損失,タービン内部損失,の他、圧力損失、熱損失,機械損失などにより、次のグラフの赤破線のようになります。サイクル線で囲まれる面積が小さくなり、ガスタービンから得られる仕事量は少なくなります。

実機の仕事量

また、実機の熱サイクルでは、熱損失がないと仮定した断熱式が使えないため(2)式は成り立たなくなり、どれだけ断熱状態に近づけたかの指標となる圧縮機断熱効率ηcとタービン断熱効率ηtを使って熱効率を表します。実機ガスタービンの熱効率は、圧縮機での圧力比(P2/P1)に従って増大するのではなく、下図のように圧力比を変化させると極大点をもち、大きくなり過ぎると逆に低下するため、最適な圧力比が存在します。また、タービン入口温度と圧縮機入口温度の比の影響が大きく、タービン入口温度を上昇させるとガスタービンの熱効率もアップしますし、圧縮機入口温度が低いときにもアップすることになります。

実機の圧力比と熱効率の関係

4.実機では?

ここまで、単純化した理想のブレイトンサイクルから順番に、実機のガスタービンの熱効率をご紹介してきました。実機の場合には、GT単体の熱サイクルではなく、プラント全体で効率を考えます。GT後流にボイラを設けて高温のGT排ガスの熱回収を行うことが多いです。そのため、3.で書きました“タービン入口温度T3を上昇させる”ことはGT効率の向上だけではなく、GTの排気温度上昇につながり、ボイラでの熱回収をたくさん行えるようになるため、プラント全体での効率を向上させてくれます。ただ、ボイラにも許容温度があるため、タービン入口圧力(圧力比)を上げてタービンでの膨張後の温度を下げ、GT排ガス温度を最適にする必要があります。また、タービン入口温度T3を上げると、高温部品を冷やすための冷却空気が増えてGT効率が下がる要因になることや、排ガス中のNOx濃度が上昇することにも注意が必要です。(※燃焼温度が高いほど、空気中の窒素N2が酸素O2と結合し、たくさんのNOxが生成されます。)実機の場合には、配慮すべき項目がたくさんあり、最適な圧力比、タービン入口温度を選択することがポイントとなってくることが分かります。

ガスタービン排ガスの熱回収の一例

いかがでしたでしょうか?熱サイクルについて少しイメージは広がりましたでしょうか?難しそうな性能の話も少しでも身近に感じていただけましたら幸いです。

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