蒸気タービン制御 基本の「き」その2 起動から通常運転までのプロセス

こんにちは。蒸気タービン制御の基本について解説してまいります。前回の記事でご紹介した抽気復水タービンと制御装置の関係をふまえて、今回の記事ではタービンを起動して、通常運用に入るまでの制御がどのようなプロセスになっているかについてご紹介していきます。

1.初期状態(タービン起動前)
ボイラが起動され、復水器真空が上昇し、タービンに通気できる蒸気条件が整うまでは、タービンはトリップ状態でターニング(完全に停止すると重力によりタービンロータが曲がってしまうので、1分間に3回転程度のゆっくりした速度でターニングモータがターニングギアを介してタービンを回している)しています。
このとき、MSV、GV、ECV-1、ECV-2は全閉状態となっています。

2.タービンリセット&MSV開
ボイラが起動され、復水器真空が上昇し、タービンに通気できる蒸気条件が整ったら、タービンリセット操作をします。この時点で、MSV、GVは全閉のまま、ECV-1、ECV-2は全閉から全開となります。その後、MSV開操作をすることでMSVは全開します。

3.タービン起動
ガバナ制御装置で「タービン起動」を選択することで、GVが徐々に開いてタービン通気がされ、タービン回転数が徐々に上昇します。ターニングギアはタービン回転数上昇に伴い自動的(機械的に)外れ、ターニングモータは停止します。

4.ラブチェック
タービン、そして機械的に減速ギアで接続されている発電機がターニング回転数よりも上昇した時点(数100rpm程度)で一度タービントリップ操作(タービン非常停止PBを押す)をします。これは、タービン内でブレードと車室の接触により大きな振動が出ていないかを確認するもので、回転数上昇後の大きなトラブルを回避するものです。タービントリップにて、MSV、GV、ECV-1、ECV-2は閉止します。

5.タービン昇速
ラブチェック終了後、再度タービンリセット&MSV開操作をすると、ECV-1、ECV-2は全開します。そのまま再度ガバナ制御装置で「タービン起動」を選択し、GVによる昇速を再開します。

6.タービン低速暖機
ガバナ制御装置による昇速は、定格回転数の10分の1程度の回転数で一旦停止します。これは、タービンの暖機運転を行い、タービンロータを含めた内部の温度を均一に上昇させ、その後の定格回転数までの昇速の準備を行います。低速暖機運転の時間は、タービン起動時の各部温度などにより最適時間が決定されていますので、これに従います。

7.タービン再昇速
低速暖機運転時間が経過後、ガバナ制御装置の「タービン再昇速」を選択して定格回転数まで昇速します。

8.発電機同期併入
定格回転数到達後、電気側の準備が整い次第、系統周波数に同期して併入操作を実施します。併入によりガバナ制御装置は「タービン負荷制御」モードに切り替わり、初負荷(約5%)を制御します。冷態起動時は、初負荷で20分程度を保持しタービンの負荷上昇による熱応力低減を図ります。

9.タービン負荷上昇&抽気活かし
抽気圧力が取れる負荷(定格の25%程度)まで負荷上昇したら、抽気止弁を開けて、ECV-1は第1抽気圧力を、ECV-2は第2抽気圧力を規定値に制御することを開始させます。但し、ECV-1,2は、タービンリセット後全開で待機していますので、抽気制御開始操作をすることで、ECV-1(2)が徐々に閉動作して、第1抽気圧力、第2抽気圧力が上昇し、設定値との偏差が規定値内(±1%程度以内)になった時点で、制御を開始することになります。各抽気加減弁が制御に入る際は、それまで各系統圧を制御していた、タービンバイパス蒸気変換弁/10k/2.5k蒸気変換弁を自動から手動とし、プロセス送気の変動が無いように注意しながら、徐々に閉します。

10.マトリクス制御
基本的には、発電機出力制御をGV、第1抽気圧力をECV-1、第2抽気圧力をECV-2が制御するのですが、制御対象である発電機出力、第1抽気圧力、第2抽気圧力と、その操作端であるGV、ECV-1、ECV-2は相互干渉系であるため、三つの制御がお互いに干渉し制御が安定しない問題があります。
この問題を回避するために、マトリクス制御があります。
タービン設計段階で、GV開度(LGV)、ECV-1開度(LECV1)、ECV-2開度(LECV1)から、発電機出力(MW)、第1抽気流量(FEC1)、第2抽気流量(FEC2)を決めるパラメータが決まります(操作端数3×プロセス量数3のマトリクス。これを「プラントマトリクス」と呼びます)。このプラントマトリクスの逆行列が発電機出力、第1抽気流量、第2抽気流量からGV開度、ECV-1開度、ECV-2開度を求める「タービンコントロールマトリクス」となります。
タービンコントロールマトリクスの入力である発電機出力は、発電機出力指令と実際の発電機出力の偏差を比例積分して与えられます。同様にタービンコントロールマトリクスの第1(2)抽気流量は、第1(2)抽気圧力設定と実際の第1(2)抽気圧力の偏差を比例積分して与えられます。

図-2 マトリクス制御(点線内がマトリクス)

これにより、GV、ECV-1、ECV-2に的確な開度指令が出せ、相互干渉の少ない制御が実現できることになります。

いかがでしたか。以上で起動から通常運転までのプロセスに関するご紹介はおしまいです。次回は、その他の制御モードをご紹介しますので是非こちらも読んでみてください。

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